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朝、階段を降りてくる足音に、美恵子は努めて明るく声を掛けた。
「麻衣―、今日から期末テストでしょ。昨日も遅くまで勉強、大変だったわねぇ」
予想はしてたが、やはり美恵子の問いかけに答える様子はない。
麻衣は冷蔵庫から牛乳を取り出しマグカップにそそぎ一気に飲み干すと、慌ただしく玄関へと向かう。
「ちょっと麻衣、朝ご飯は?何も食べないとおなかすくわよ。テスト中おなか鳴ったら恥ずかしいんだから。シーンとしてる中、グルグルーなんてねぇ」
自分で言って自分で笑いながら麻衣の後を追う。
「ごはん本当に食べないの?だったらバナナを持っていきなさい。それがいやなら先生に見つからないように、こっそりお菓子を持っていく?」
美恵子は何も答えない麻衣に半ばやけになって話しかけた。
そんな美恵子をちらりとも見ようとせず、玄関で靴を履き鞄を肩にかけると、
「…いってきます、」
消え入りそうな一言を残し、麻衣はドアの向こうへと消えた。
一人残された美恵子は深い溜息をつき、その場に座り込んだ。
どうして何も答えてくれないのか…。
麻衣への怒り、悲しみ、淋しさがないまぜになり涙が滲む。
「でも…いってきますは言ってくれたなぁ。麻衣、いってらっしゃい。おなかが鳴っても知らないからね」
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