第二章 学校に行こう

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どのくらい泣いていたのだろうか。 美恵子の脇を通り過ぎる人達は、冷たいもので誰も声などかけてこない。 こんな所を知り合いに見られたら恥ずかしい気持ちと、誰かに助けてもらいたい気持ちを抱えたままグズグズと立ち上がれないでいると、天から声が降ってきた。 「ちょっと、あんた大丈夫?どっか具合でも悪いの?」 美恵子が顔を上げると、そこには肝っ玉母さんのような中年の女が心配そうに見下ろしていた。 その肝っ玉母さんは近所に住む50代の主婦で田中と名乗った。 彼女はスーパーに買い物に向かう途中、泣きじゃくる美恵子を見つけさんざん迷った末、声を掛けてくれたという。 田中に促されて少し先にある屋根つきのバス停のベンチに並んで座ると、 「あんな所で一人で泣いて、具合悪いんでなければ何かあったの?よかったら話してみな。楽になるかもしれないよ?」 そう言って人の良さそうな顔を向けた。 娘に無視され、道端で泣いててもみんな素通りしていった中、唯一声を掛けてくれた田中に美恵子は再び泣いた。 そして美恵子は自分の思いをすべて語った。 仕事が忙しく、常に疲れて帰ってくる夫に言えなかった事は、赤の他人にはこんなにも言いやすいものなのだと知った。
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