第三章 娘の声が聞こえる…

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麻衣の学校に着いたのは14時少し前だった。 午前中でテストが終わり、部活動も休みなのでほとんど人の気配がない。 張り切る田中の後ろを歩き、まずは麻衣の下駄箱を見に行った。 どうかもう帰っていますように、と祈りながら二年生の下駄箱の中から麻衣の場所を探す。 「二年一組の…細田、細田、細田…麻衣、あった、ここだわ」 今では珍しい木製の下駄箱の中段に、麻衣の名前を見つけた。 靴は、あった。 という事は、まだ麻衣は学校のどこかにいるのだ。 テストはとっくに終わってるはずなのに、友達と記憶を頼りに答え合わせでもしてるのだろうか。 落胆しながらも下駄箱から離れようとした時、美恵子は軽い違和感を覚え、気になって振り返った。 いつもの麻衣の靴に間違いない。でも、なにかがおかしい。 美恵子は、麻衣の下駄箱に近づきもう一度よく覗き込むと言葉を失った。麻衣の靴の中には無数の画鋲が入れられていたのだ。 どす黒い悪意がそこに見て取れた。
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