嘘つきは眼鏡の始まり

30/32
155人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
「花崎?」 「そんな話されたって、信じろって云われたって、わかん、ないっ……!」 目の前が滲んで見えて、慌ててハンカチで押さえる。 星名さんは黙ってしまった。 周囲は騒がしいのに、私たちのテーブルだけ異常に静か。 「だよな。 わかんないよな。 ごめん。 もう花崎につきまとわないから。 会社は、その、居心地が悪いだろうけど、……ごめん」 沈黙を破るように星名さんが立ち上がり、伝票を握る。 その手を思わずつかんで引き留めてた。 「座って、ください。 私まだ、飲み終わってない、から」 「……」 黙って星名さんが座り直しても、中身の残ったカップには手を付けないでおいた。 そのまま必死で、自分にできる最善を考える。 ……私を欺してたのは、悪意があってじゃない。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!