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「大変だああっ!」
12月24日の白い天使のような雪が降り積もる夜、大事な仕事を控えていたサンタクロースの家では、とんでもないことが起きていた。
「折角、この日の為に用意したのに」
サンタクロースが子供達に配る為に、一生懸命に集めたプレゼントの箱が部屋から消えていたのだ。
世界中を駆け回りようやく捕まえた"青い鳥"も、時計うさぎの"新しい時計"もマッドハッターの為の"お洒落な帽子"も、三匹の小豚には"丈夫なマンション"まで用意したと言うのに、その全てが足を生やして逃げていったかのようになくなっていた。
クリスマスにはサンタクロースと同時に、サンタクロースが苦手な生き物が現れ、決まって悪さをするのでその生き物の仕業だとサンタもトナカイ達も直ぐに気付いた。
手足の生えたピーマン。歩くネギ。悪戯好きなパセリなど呼ばれるその生き物は不思議の国の人々は、国の言葉で"クリスマスぎらいさん"と言う意味でこう呼んでいる。
「また"グリンチ"が来たんだ、あいつがプレゼントを盗んだんだ」
「困った事になったね、配るのは今日なのに」
プレゼントボックスがないと、サンタクロースは仕事にならないのもさることながら、グリンチは悪戯好き。本人にとっては軽い悪戯でも、国の人にとっては、大迷惑。
マンションを貸し切り、新しい時計と帽子を所有物にし、青い鳥を......これ以上はカテゴリーミスになるので割愛するが、考え得ること以上の悪さをする。そうなると国中はパニックになるので、なんとかしなければならない。
「どうしようサンタさん」
「取り替えそう。子供達の為に。みんな出発するよ」
「取り替えすって、こんな真っ暗な中、どうやって?」
「明かりがあれば探せるよ」
「暗い夜には、ピカピカの僕の鼻が役に立つのさって、明かりは捨てたじゃないか、去年はクリスマス前に配ろうとしてたし、煙突から落下して顔が真っ黒になったけど、大丈夫?」
トナカイはサンタのドジっぷりを考えると心配で仕方なかった。
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