ドジッコサンタと不思議な旅

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 星の王子様は、年明けに星の王様になり、星のお姫様は新たな星の王子様を授かり、出産するとのことだった。  「これは引出物だよ」  「粗品で御座いますが」  お姫様もペコリとお辞儀をして、ピカピカと金色に光る引出物をサンタに渡した。  「これは、私がプレゼントにする予定だった、金の卵だ」  サンタは盗まれた筈の金の卵を見て仰天した。  「グリンチが管理しきれないからって一個分けてくれたんだ」  「有り難う。こんな形で戻ってくるとは思わなかったよ」  よもや、サンタクロース自身がクリスマスの奇跡を味わうなんて、サンタ本人も長年サンタクロースをやって来て初めてのことだった。  「じゃあ、デートを楽しんで」  「デートじゃあないんだけど」  サンタが言い終わる前に、星の王子様は流れ星のような速さで立ち去っていった。  「良かったですね、プレゼントが一つ戻って来ましたよ」  「そうだね、今夜は特別なことがよく起こる、町中でも」  サンタクロースが手を差し伸べた先には、教会があり門の前では"ロバ、犬、猫、鶏のブレーメンによるクリスマスライヴWith森の音楽隊のバック演奏" と書かれた垂れ幕が張ってある。ロバは鮮やかなステップをしたり、ムーンウォークを決めたり、猫は丸くなってブレイクダンス、犬は陽気なヒップホップ、鶏がボーカルをやっている。  「楽しそうですね、でも、プレゼントの回収は急がなくていいんですか?」  「ああ、早く思い出すべきだったね。実はプレゼントの"新しい時計"にはちょっとした細工があるんだ。魔法の時計屋さんで作って貰ってね」  新しい時計を受け取る筈の時計うさぎは、寝坊するので何時も時間を気にしながら生活している。そんな時計うさぎの為に、サンタクロースは"時間がなくなるスイッチ"を魔法の時計屋に作って貰ったのだ。 百年以上の寿命を持つ大きなのっぽの古時計を作ったことのある時計屋も、今までに作ったことがなかったのでワクワクしたという。
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