僕と佐知子と御神木と

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霊能力者とは、なにも降霊術だけをしているのではない。 その仕事は多岐に渡り、人探しや失せ物探しの依頼も多い。  人はもちろん、この世のすべてのものに魂が宿る。 生者、死者、動物、植物、物、どれをとっても例外は無く、霊媒師は常人には見えないそれらを視て、感じ、声を聞き、生者と死者の間を取り持つのだ。 更に上級の霊能力者になると実体の無い霊魂に触る事が出来る。  霊魂に触れるという事は、並みの霊媒師では歯が立たない悪霊を、腕力で封印する事だって可能になる。 霊に干渉出来る霊力(ちから)を持つ者は、百年に一人、生まれるかどうかの確率で、誕生すれば“希少の子”として幼少の頃から厳しい修行をさせられる。 霊力(ちから)と武術をとことんまで極め、どこよりも危険な場所に、誰よりも先に立つ事を強制されるのだ。 そこに本人の意思など存在しない、一族の為に人生そのものをひたすら消費させられる。 16年前の冬。 私は“希少の子”としてこの世に生まれ落ちた。 こんな霊力(ちから)があるが故に、幼い頃から自由が無かった。 家が祓い屋だと言えば最初は面白がっていた同年の子供達も、すぐに気味が悪いと離れていった。 こんなに傷つくなら、もう友達を作ろうとは思わなくなった。 高校進学も諦めた。 霊力(ちから)などいらない、無くなってしまえばいいと何度も思った。  だが今夜は違う。 今夜だけは私に霊力(ちから)があって本当に良かったと思っていた。 私はこれまでに何千回と組んできた印を結び、精神を集中させ佐知子の居場所を探った。   数十秒後。 強い恐怖と羞恥の念に、淫猥で下衆な念が絡みついているのを捕捉した。 吐き気を催す身勝手な邪悪さに喉の奥が痙攣する。 場所は……屋敷の中ではない。 おそらく広い庭のどこかだ。  それがどういう意味なのか、佐知子の置かれている状況がどういうものなのか、私にだって容易に想像がつく。 私は腹の奥底から湧き上がる怒りを撒き散らし、佐知子の無事を祈りながら部屋を飛び出した。  頼む……間に合ってくれ!
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