第1章

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「猟奇邂逅」       神空寿海  仕事帰り、ふと、いつか見た映画の子守唄が頭の中で流れた。  中学の頃見た映画。今になって何で思い出したんだろう。  変なタイムスリップ気分を不思議に感じながら、マンションのドアを開けた途端玄関先で、愛猫の「たま」が血を吐いて倒れた。  「たまー。」  猫を抱え急いで動物病院へと向かい、閉院時間ぎりぎりに駆け込んだ。  「先生、うちの猫が血を吐いて倒れたんです。」  と、云うや否や、獣医の先生が血を吐いて倒れた。  携帯から呼んだ救急車から二人の乗員が降りてきて、病室に入るなり、また血を吐いて倒れた。  慌てながら、今度は警察を呼ぼうと思ったが、また同じ事になるかも知れないと、直接近くの交番へと走った。  人影が見えて、少しほっとしながら引き戸を開けると、警官がいきなり血を吐いて倒れた。  どーしろと云うんだ。  今度は交番の電話から警察署に連絡を入れ事情を説明してみたが、到着までは時間がかかる筈。その間に気は引けたが、救急車も呼んだ。  最早地獄絵図。パトカーと救急車から降りて来る順番に、次々と血を吐いて倒れてゆく。 何が起こってるんだ? そこに血を吐いて倒れない人物が近寄ってきた。 その男が言うには、動物病院の所に行ったら、血を吐いて倒れている獣医と猫を見つけ、交番に来たとの事だった。 胡散臭いこの男、何で血を吐いて倒れないのか、それが当たり前なのか、頭を掻きむしりながら、探偵を自称していた。 ホントかよー。疑いの眼差しに気が付いたのか、推理を始めた。 「これはですねー。動物病院の遺産目的の邪魔者を順番に消して行ってるのでしょう。予定外にあなたが動物病院に現れたので、当初の目論見より死人を増やす事になってしまったに、違いない。」 何だそりゃ。 首を傾げていると、もう一人、血を吐いて倒れない少年連れの自称探偵の男が現れた。パトカーの不自然な止まり方が気になったらしい。 数分前より更に険しい顔をしていると、少年に説明する様に話し始めた。  「小林くん、これは怪人二十面相が盗みの目を背ける為に引き起こした、予定殺人ですよ。」 何だよ、怪人二十面相って。 秒刻みでややこしくなってきたぞ。
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