智彦の場合

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死にたいのに 本には死ねないと書いてある。 昔見つけた本に書いてあった言葉だ。 古い本で、死とはっていう説明から書いてあるもの。 本しか時間を潰すものがないから家中の本を探して読んでるうちに見つけたもの。 聞き慣れない単語とボロボロな本ってのが興味を引いて読んだ。 家が楽しいところだったらおとなしく本を読んで時間を潰すなんてこと ありえないだろう 家がもっと楽しいところだったら… 引きこもりになっても優しくしてくれる母と心配そうに励ましてくれる父がいたらと思う けれど、俺にはそんな人いない。 毎日接待だといいながら酔っ払って帰ってくる父。 父に言いなりかと思いきや 外で不倫している腹黒の母。 9時までは家に誰もいない。 9時に急いで帰ってくる母、10時に帰ってくる父に合わせて偽装の夕飯を作ってあたかも余り物をタッパに詰めましたよって顔で冷蔵庫に入れる。 これが今夜の父のつまみ。 俺は帰ってきたら自分でご飯を作って9時前には部屋に入る。 父の悪酔いに付き合いたくないのと、俺の顔を見るごとに嫌な顔する母に会いたくないからだ。 自分で産んだのになんでそんな顔するんだよ。父と自分の顔が混ざっている俺の顔を見たくないんだとさ 家でも学校でも居ても居なくても一緒な俺が 必要ないんじゃないかと思うのが嫌で 死ぬ方法を見つけようと思った。 死ねないなら、死んでそいつらに復讐するとか無理なのかな?それは嫌だな。 けれど、よく考えてみると不思議だ。50歳で俺が死ぬということはわかった。みんな死という表現よりも眠るという表現を使うが この本を見るまで考えもしなかったのだ。50歳前に死ぬということを、50歳まで死ねないということを。 虫や鳥、ペット達の死は知られているのになぜか人間は違うとされている。我々はそのような事はないその一言で終わる。 本当に死なないのか半信半疑の俺は、本棚で見つけた古びた本に書いてあった、死ぬ方法と書かれている自殺というものをやってみようと思う。
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