SS.2「古き思い出」

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「彼氏とは巧く行ってるの?」 移動教室での移動中に沙希は訊いた。 「そうね。コスプレって万能だと思ったわ」 恵里の返答にイヤな予感がした。一気にテンションが下がる。 「鏡を見れば、私の嫁が(自主規制)で(自主規制)なのよ。そんなの見れば余計に興奮するじゃないッ!」 コスプレが趣味で、始めた当初はもっと純粋な気持ちだった記憶があるが、沙希の知る限りどこから邪な気持ちが芽生えたのかは分からない。 まぁ、オタクこじらせて変な方向に爆走しているだけだと思われるが。 「そんなら、いちゃついてるとこビデオに撮影してもらえれば?」 「ダメよ。そのうち地の私が出ちゃうから萎えちゃう」 「あ、そう」 惚気なのかなんなのか。脱力したことには変わりは無い。 「だからコスプレはイベントだけで、いちゃつくのは辞めたわ。イベントで私の推しキャラが視姦されてるって思うようにしてる!」 自信たっぷりのガッツポーズ。言っていることはアホなことには変わりは無い。 「今度のコミケもそんな邪な気持ちで望むの?」 「そんなワケ無いじゃない」 ズイッと詰め寄られた。そのままキスをされそうな位に顔が近い。シリアスな表情だが、近すぎてよく分からない。 「自分がチョメチョメされてるエ□同人を買い漁りに行く嫁なんて萌えシチュ、逃すわけが無いじゃない。それを実現するための努力は惜しまないわ」 「シリアスに言うことか。それに伏せ字になってない」 恵里を避けて廊下を進む。しかし、すぐに振り返った。 「私に言うことは?」 恵里は察したように笑みを浮かべた。 「このコスプレして私と一緒にコミケ行かない?」 「そのコスプレはヤダ」 エロゲーのキャラはやりたくない。ケータイの画面に映されたそれが分かってしまう自分にも呆れてしまう。 「だって、ちっぱいで小麦肌で吊り目っていったらコレしか……」 「ちょっと表出ろ。じっくりとお話ししようか」
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