SS.2「古き思い出」

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待ち合わせ場所のコンビニのイートインスペースで朝のおにぎりを頬張っていた。 朝日が眩しい朝五時。朝は苦手では無いが、流石に眠い。 恵里には悪いが、服装は至って普通だ。白のブラウスに黒のタンクトップとハーフデニム。靴だってバンズのハイカットのスニーカー。 ショルダーバッグには熱中症対策の品々が色々。軍資金はいつもより多めに。 しかし、てっきり電車で行くのかと思ったが、このコンビニは駅とは方角的に反対。家から近いのは良いが、いったい何で行くのだろうか。 すると、初心者マークを付けたスポーツカーが駐車場に入ってきた。白いボディに派手な外観。確か国産車だったはずだが、年式は古い。なぜかボンネットだけが黒い。 音もなかなか大きい。暴走族ほど大きくは無く、音質も重厚と軽さが混ざっている印象。 バックで駐車スペースに入ってくる。ドアを開けて後ろのタイヤ付近を見ながらスペースに合わせて操作するプラチナブロンドの女の人。顔がなんか見たことある気がする。 「いや、まさかね……」 脳内検索で該当は一つしか無かった。パーツを組み立てていけば、あの整った顔が浮かぶのだ。 「Good morning! お待たせ」 恵里だった。ウィッグなのか、背中まで伸ばしたプラチナブロンドはウェーブを効かせていた。元々の髪を完全に隠している。 しかし服装は普通で、半袖のパーカーにダメージデニム。なぜかチェック柄のベレー帽を被っていた。 「おはよ。とりあえず、突っ込ませて」 「え? ドコにナニを?」 「まず自重しろ。あのクルマは何?」 「何って、日産のECR33型スカイラインよ。もちターボのマニュアル」 「いや、そういうことじゃなくて。出所は?」 わざとか天然か。時々本当に分からないことがある。ただ、前者に一票入れたい。 免許を取得していたことは知っていたが、実際にクルマを乗ってくるとは夢にも思わないだろう。しかもバリバリのスポーツカーだ。(沙希主観) 「ああ。彼氏から借りた。二束三文で買ったクルマだし、近々乗り換える予定だから好きに使って良いって。保険は一日保険ね」 「あ、そう……」 不安要素がまた増えた。まさか途中で空中分解するかもしれないクルマに乗ることになるとは。(沙希主観)
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