SS.2「古き思い出」

12/13
前へ
/22ページ
次へ
恵里は右手で髪を弄び始めた。その姿を写真に収めようとカメラ小僧が集まる。 「パパラッチみたいね」 「そんな姿じゃ、しょうが無いよ。あんたの横でスカート履かなくて正解だわ」 ローアングルでカメラを構える野郎も居るので、スカートを履いたら中身を晒すのと同義である。恵里のコスだと別の部分も狙っていたりするが。主に上半身。 「童貞ですか? ……ドン引きです」 サディスティックな表情と冷たく蔑んだ眼。遙か北から極寒の風を呼び込むような顔は一部を除いて効果的なようで、カメラ小僧たちは霧散する。 「討伐完了。任務を続行します」 「神機持たずに流石だわ」 背中のリュックには既に様々なグッズが整然と積み込まれている。適当に入れると入らなくなるそうだ。 デジカメをネックストラップに繋ぐと、タオルで汗を拭きスポーツドリンクで喉を潤す。500mlのペットボトル二本目を空けた。 「私を誰だと思ってるんです? だけど、沙希が東方に興味があったのは意外ね」 急に素に戻る。相手を恵里として話せば良いのか、ア○サとして話せば良いのか一瞬迷うが、どちらも変わらないことにすぐに気付いた。 「言ってなかったっけ? 私はいろんな物語を見るのが好きだからね。その点、東方は細かく設定していないから、いろんな物語を紡ぎ出せる。そこが好きなのよ」 「ふぅん。急に饒舌になったわね。ドン引きです」 「ねぇ、そろそろ怒って良いかな? 良いよね?」 「イヤです」 「コノウラミハラサデオクベキカ」 「アラガミ化禁止です。捕食しますよ?」 笑いながら空のペットボトルをショルダーバッグに戻す。中には戦利品のCDやDVD-ROMが所狭しと並んでいた。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加