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日も傾きかけて空が赤く染まり始めた頃、目当ての品は全て揃った。
恵里が扮するア○サのコスプレの完成度が高く、出る前にコスプレ会場で撮影会になっていた。
他のコスプレサークルが作った神機のレプリカ(木製、完成度高し)を持たされてもポーズを決める辺り、相当場慣れしている様子だった。
沙希は少し離れた所のベンチで、菓子を摘まみながらその様子を眺めていた。
「沙希、帰るよ」
撮影会を終えて恵里が迎えに来た。
「楽しんだ?」
「とっても」
預かっていたリュックを恵里に渡した。相当重いが、恵里は軽々と持って肩にかけた。
二人で並んで駐車場に歩いて行く。肩に掛かる重さも身体の疲れと区別はつかない。
一般車や痛車などが並んでいる駐車場でも、シンプルなカスタムのスカイラインの場所はすぐに分かった。遠いところに止めたお陰で、回りは凄い空いていた。
荷物を積み込むと、恵里はおもむろにトランクから三脚を取り出して設置した。
「沙希、まだ二人で撮ってなかったわよね?」
「あ、そうだね。でも良いの? コスプレしてないけど」
明らかなコスプレと明らかな普段着。同じフレームに入るのは気が引けてしまった。
「え? あのキャラになってくれるの?」
「ヤダ」
「ケチ」
会話とは裏腹に、スカイラインを背にしてレンズの前に立った。
セルフシャッターが切られた。SDカードにはオレンジに染まった最高の笑顔が二つ、納められた。
昔話を懐かしむ歳では無いが、思い出すくらいなら25歳でも構わないだろう。
PCのアップデートのため、データの整理をしていたら偶然にも昔の写真が出てきたのだ。
親友と撮った、戦場から生還した写真。忘れたと思っていても頭の片隅に焼き付いているのだ。
「あの時は思春期こじらせてたわね」
言い訳のような独り言。恥ずかしい青春時代というヤツだ。
スマホの画面から電話帳を開く。かつての親友の名前を見つけ出し、通話ボタンにスワイプした。
「あ、沙希? 久しぶり。昔の写真出てきて久々に声聞きたくなっちゃってね」
PCの画面で、写真をドラッグし、クラウドにドロップした。
アップロードすると、すぐさま保護にチェックを入れてお気に入り写真のフォルダに移した。
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