SS.1「クリスマス」

3/9
前へ
/22ページ
次へ
学校が終わり、俊哉は現愛車のE型ヴィヴィオGX-Rのキーを回した。軽くセルが回り、EN07に火が入る。最近はダウンジャケットを羽織っても、下がワイシャツとTシャツだけだと流石に寒い。デニムパンツは相変わらず夜風に冷やされる。 「ああ。悪い。終わったらすぐに行くから」 ケータイの通話を切る。安物のケンウッドのオーディオの小さな画面にはラジオの周波数が表示され、スピーカーからは聞き慣れたクリスマスソングが流れている。 クラッチを切ってストロークの長いシフトレバーで二速に入れ、サイドを下ろした。 「雪か……」 2000回転でクラッチを繋げた。軽いボディはスッと動き出す。 ウィンドウに当たっては溶ける雪。ロマンチックな夜になりそうだから憂鬱だ。バイト先のレストランは混み合うだろう。 出来ればシフトが終わると同時に帰りたい。恋人、美波との約束があるから。 バイトは18時から4時間。12月24日。予定通り帰れそうに無さそうだ。 メガネを直してから三速へ。途中で止まって考え事するワイパーを無視してアクセルを踏み込んで道路の流れに乗った。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加