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学校が終わり、俊哉は現愛車のE型ヴィヴィオGX-Rのキーを回した。軽くセルが回り、EN07に火が入る。最近はダウンジャケットを羽織っても、下がワイシャツとTシャツだけだと流石に寒い。デニムパンツは相変わらず夜風に冷やされる。
「ああ。悪い。終わったらすぐに行くから」
ケータイの通話を切る。安物のケンウッドのオーディオの小さな画面にはラジオの周波数が表示され、スピーカーからは聞き慣れたクリスマスソングが流れている。
クラッチを切ってストロークの長いシフトレバーで二速に入れ、サイドを下ろした。
「雪か……」
2000回転でクラッチを繋げた。軽いボディはスッと動き出す。
ウィンドウに当たっては溶ける雪。ロマンチックな夜になりそうだから憂鬱だ。バイト先のレストランは混み合うだろう。
出来ればシフトが終わると同時に帰りたい。恋人、美波との約束があるから。
バイトは18時から4時間。12月24日。予定通り帰れそうに無さそうだ。
メガネを直してから三速へ。途中で止まって考え事するワイパーを無視してアクセルを踏み込んで道路の流れに乗った。
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