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「お疲れー」
夕食の後、残っていた従業員を見送る。
美波はツナギに着替えて家から出ると、雪が降っていることに気づいた。
「ホワイトクリスマスかぁ……」
俊哉遅れそうだなぁ。そう思いながら自分のシルビアを工場内に入れた。
Wi-Fiで繋げたノートPCで動画サイトにアクセスし、BGMとなる曲を選んで流し始める。ちなみにそれが出来るようにセッティングしてくれたのは俊哉だったりする。
営業中はマズいが、青木モータースはもう営業時間外。何を流そうが、個人の自由である。
リフトでタイヤが浮く程度まで上げて、エアインパクトレンチでホイールナットを外す。
時間は20時前。約束は23時。減ったリヤタイヤを交換するには十分だろう。三級整備士を取ったばかりだが、実践経験は若い整備士には負けない。
タイヤチェンジャーの横に置かれた新品のピンソPS-91。235/40R17二本。
これを外したシュティッヒのメッシュ3に付け替えるのだ。
「新品はまた今度だね」
リフトの脇に置いた、去年新品で買ったスタッドレス、アイスナビZEAⅡ、205/60R16。組み合わせるホイールは中古で買った、塗装の剥がれかけたインパルRS。センターキャップは買ったときから無かった。
リヤのシュティッヒ及びフロントのワークXT7を外し、四輪にインパルを履かせた。
ナットを付けてインパクトレンチで仮締めしてからリフトを下ろし、トルクレンチで本締めをする。
カチンカチンと小気味の良い音が工場の壁を反響する。
「積もるかも」
窓に付着して溶ける雪の粒はかなり大きくなっていた。そういえば、今朝の天気予報では夕方翌日の朝にかけて積雪すると言っていた。
お陰でタイヤ交換が入庫拒否するほど来た。やり方さえ分かっていれば2000円を払うのが馬鹿らしいくらい簡単なのに。
シルビアにスタッドレスを履かせ終えた。ムチムチした高扁平タイヤもなかなか悪くない。
「さて、さっさとやっちゃいますか」
スリップサインが見えてしまっているタイヤを転がしてチェンジャーまで持って行く。こいつにはもう一仕事頑張って貰うのだ。
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