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俊哉は内心、舌打ちをした。バイトするレストランは酒の提供があるものの、居酒屋では無いので面倒な客というのは少ない。
少ないのだが、その面倒な客に当たってしまった。若い女性のグループで愚痴を言い合っているところから、揃って彼氏が間に合わなかったと推察できる。
「店員さん格好いいよね-。ほんとイケメ~ン。年は20歳くらい?」
アルコールが入った彼女たちは男であれば誰でも良くなったのか、片っ端から男性店員に声をかけていて、それに当たってしまった。
こういうのは無下に断ると面倒。対応するのも面倒。つまり面倒。
店内に掛かっている時計は21時50分頃。内心の舌打ち二回目。
「私たちと付き合うなら誰が良い?」
出来るならこの酔っている女達に氷水を頭から被せてやりたい。そうとう頭にきているなとすぐ客観的になるが、イライラは募るばかりだ。
返答に困っていると、店長が話に割り込んできた。
「クリスマスの夜にこんな可憐な女性を放っておくなんて罪だな。俺は君たちを見逃さないよ。だが、彼は許してやってくれ。心に決めた待ち人が居るんだ」
22時過ぎてからタイムカードを押せよ、と耳打ちして女性客の相手を代わった。
普段から仕事中に女性客を口説くどうしようもない店長だが、この時ばかりは頭を下げずには居られなかった。
バックヤードに早足で戻る。着替えてからタイムカードを押せば、22時を過ぎる。
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