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睦美は眉を跳ねあげ、陽に目を向ける。
追及心が逸れたのか、からかった眼差しだ。
「あ、渡来くん。もしかして、あれって健在?」
「もしかしてって、一歩も譲ってるつもりはないけどな」
「……なんだか当てつけられただけみたい」
睦美はため息をついたあと、友だちに向かって首をかしげた。
里佳が云った『鈍くさい』と『大好き』に、叶多はがっかりとうれしさを同時に感じるという奇妙な体験をしつつ、陽の加勢もあってひとまず睦美たちは退散しそうで安堵した。
じゃあね、と睦美が云いかけたとき、遠巻きに見ていたユナが叶多の隣から顔を覗かせる。
「睦美、『あれ』って何?」
叶多を真ん中にしてユナとは反対側に立っている、陽の舌打ちが頭上から聞こえた。
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