第28章  新しい年(つづき)

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「まぁ、まぁ。遠い所を、よくお出でくださいましたねぇ」 玄関で迎えてくれた初老の女性は、笑顔が、どこかナッちゃんに似ていた。 「さぁ、上がってくださいな」 なんかいそいそとした感じで迎え入れられ、案内された先では 初老の男性が待っていてくれる。 だが、すぐにお父さんと分かるその人を前に にわかに僕の緊張が蘇ってきた。 「あ、あの……」 言葉を口にしかける僕の胸で、鼓動がどんどん速くなって、 なんだか今にも口から飛び出してきそうに感じる。 しかし、そんな部屋の入り口で立ち竦むようになった僕を、 ナッちゃんが、そっと促してきた。 「冠くん、とにかく入って?」
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