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12月23日の夜。
いつも通りに仕事から帰って来たあなたがキッチンにやって来た。
帰るなりキッチンに来るなんて珍しい。
何か用事でもあるのかな?
そんなことを思いながら“お帰りなさい”と顔を上げると、あなたは少し笑みを浮かべて何かを差し出した。
「ハイ。」
それは淡いピンク色の財布。
「えっ、くれるの?!」
「財布、もうかなりボロボロになってたよね。」
普段は予告もなくプレゼントなんかする人じゃないから、仕事の関係で誰かにもらったのかなとか、店でお客さんに渡す景品の余りをもらえたのかなと思ったりする。
「どうしたの、これ?」
「ん?安物。」
「えっ、もしかして買ってくれたの?」
「ちょっと早いけど誕生日おめでとう。」
「ちょっと?」
私の誕生日は夏ですよ。
ちょっと早いどころじゃないよね。
「キリストさんの誕生日だから。」
なるほど、どうやら少し早いクリスマスプレゼントらしい。
ってことは、それはいつものアレですね。
照れ隠しってやつ。
こういうところがホントに可愛い。
だから私はあなたに思いっきり抱きついてキスをした。
「大好き!!」
あなたは更に照れ臭そうに笑う。
「安物だからすぐダメになるかも。」
「でも嬉しい!ありがとう!!」
プレゼントをもらったことはもちろんだけど。
仕事の合間に私のことを考えてくれて。
店に並ぶ財布を見て、もうずいぶん長い間、私が新しい財布を買うのを我慢していたことを思い出してくれて。
何年経っても、一緒にいない時もあなたの中にちゃんと私がいることが嬉しい。
これまで何度も一緒にクリスマスを過ごして来たけれど、結婚してからはいつの間にかお互いへのプレゼントをしなくなった。
だから今年もいつものように、少しクリスマスっぽい料理とケーキを一緒に食べるだけで終わると当たり前のように思ってたんだけど。
あなたの優しさとか私を大事に想ってくれていることを改めて感じられたから、今年のクリスマスは少しだけ特別。
クリスマスイブは温かい料理を用意して、いつものようにあなたの帰りを待つことにしよう。
特別な日も、何もない日も、どんな時もあなたと一緒に過ごせることが私の一番の幸せ。
今年もたくさんの幸せをありがとう。
来年もまた、とてつもなく幸せな日常をあなたと。
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