“もしも…”

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車は夜の高速道路を軽快に走る。 真っ暗な景色が、窓の外をすごいスピードで流れていく。 車の中には、あなたと私。 あなたが運転席でハンドルを握り、私は助手席で他愛もない話をする。 「急に信号機が出てきて、赤だったらどうする?」 「ビックリする。“えぇーっ?!”って。」 くだらない“もしもの話”に、私たちは声を上げて笑う。 しばらくすると、私はまた話し掛ける。 「このすぐ先に踏み切りがあったらどうする?遮断機がカンカンカン…って。」 「えーっ、大事故になるよ。」 そしてまた、声を上げて笑う。 高速道路をおりて家に向かう道の曲がり角で、私はまた尋ねる。 「ここ曲がってすぐ、一方通行で高速道路の入り口だったらどうする?」 「次どこ行く?って…何回高速乗るんだ。家に帰れないよ。」 他の人が聞いたら、面白くもなんともないかも知れない会話。 あなたと私にとってはとても面白い“もしも”の話。 “もしも”あなたと結婚していなかったら…私は今頃、どんな人生を送っていただろう? こんなに穏やかに暮らせていたかな? “もしも”あなたの隣にいるのが私じゃなかったら、あなたはもっと幸せだったかな? 「ねぇ、奥さんが急に違う人に変わってたらどうする?」 「はぁ?また訳のわからん事を…。」 呆れた顔であなたは呟く。 あ、そこは笑わないんだ。 「じゃあ、若くてすっごくかわいい人に“好きです、付き合ってください”って言われたらどうする?」 「そんなのあるわけないでしょ。」 それ、“もしも”の話の答になってない。 あなた、けっこう男前ですよ。 近所の奥さんとか知り合いの人から、“イケメンの旦那さん”ってよく言われるんだよ。 「どうだろうねぇ…。で、もしもそんな事あったらどうするの?」 「どうもしない。」 「ふーん…。」 ホントかなぁ…。
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