“もしも…”

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結婚して13年以上も経った嫁の私は、若くてすっごいかわいい人に勝てる自信がない。 「付き合い出した頃は、少なくとも今よりは、かなり細くてかわいかったよねぇ、私…。本気でダイエット、しようかな…。」 あなたの隣で安心しきって、どんどんゆるんでいく自分に危機感を感じた私は、思わずそう呟いた。 「そう言うの関係ない。」 「関係ないの?」 「うん。気にしない。」 ふーん…。 ああ…私、甘やかされてる。 これだから私はダメなんだな。 あなたが気にしないって言ってくれても、女なんだから、もう少しは気にしなくちゃ。 「って言うか、“もしも”の話、ホント好きだよね。」 「うん。もし、私と結婚する前に戻れたらどうする?別の人と結婚する?」 「またいろいろやり直すのめんどくさいから、戻らない。今のままでいい。」 「ふーん…。」 きっと不満がないわけでもないはずなのに、今のままでいいって。 それってちょっと、嬉しいかも。 ちょっと、にやけちゃう。 家に着いて、車を降りる。 私が玄関の鍵を開けて、ドアを開ける。 あなたは車から荷物を下ろしてくれる。 結婚する前は、一緒に出掛けて、どんなに楽しい時間を過ごしても、別れ際の“じゃあね”がやけに寂しかったっけ。 別々の家に帰る事が寂しくて、早く一緒に暮らせたらいいなと思っていたんだ。 「もし過去に戻れても、私ももう戻らなくていいよ。」 「なんで?」 「なんでも。」 私は、結婚前の若かった頃より、あなたと同じ家に帰れる今が幸せだから。
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