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それを聞いていた華子ちゃんは、
西村さんにタックルするみたいにして、
背後から抱き着き、
そのまま泣き出した。
「うう…っ。ぐす、んもお。
死ぬまで言って貰えないかもって、
ずっと覚悟してたんだよ。
それなのにこんな突然言うから、
心の準備が出来なかったじゃないのッ。
お兄ちゃん、お兄ちゃん、
お願いだからもう一回」
…ああ、
誰かが幸せになる瞬間というのは。
なぜこれほどまでに生きることを、
愛おしく感じさせるのだろうか。
照れ臭そうに西村さんが耳打ちすると、
華子ちゃんは肩をすくめ、
それはそれは嬉しそうに笑う。
私の隣りにはいつの間にか昂さんがいて、
力強く手を握ってきた。
「俺、嘘だらけだったんだ」
「…そうだったみたいだね」
「もう信じて貰えないよな」
「ふふ。いいよ、一回だけ許してあげる」
ねえ、昂さん。
私は他人にも自分にも厳しい人間だった。
真面目で几帳面で、
間違いを許さなかったの。
でも、分かっちゃったんだ。
皆んな必ず間違えるし、
弱いから嘘を吐いちゃうんだって。
他人を許せば、自分も許されるんだって。
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