[芹香編] 第5章 芹香side

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それを聞いていた華子ちゃんは、 西村さんにタックルするみたいにして、 背後から抱き着き、 そのまま泣き出した。 「うう…っ。ぐす、んもお。 死ぬまで言って貰えないかもって、 ずっと覚悟してたんだよ。 それなのにこんな突然言うから、 心の準備が出来なかったじゃないのッ。 お兄ちゃん、お兄ちゃん、 お願いだからもう一回」 …ああ、 誰かが幸せになる瞬間というのは。 なぜこれほどまでに生きることを、 愛おしく感じさせるのだろうか。 照れ臭そうに西村さんが耳打ちすると、 華子ちゃんは肩をすくめ、 それはそれは嬉しそうに笑う。 私の隣りにはいつの間にか昂さんがいて、 力強く手を握ってきた。 「俺、嘘だらけだったんだ」 「…そうだったみたいだね」 「もう信じて貰えないよな」 「ふふ。いいよ、一回だけ許してあげる」 ねえ、昂さん。 私は他人にも自分にも厳しい人間だった。 真面目で几帳面で、 間違いを許さなかったの。 でも、分かっちゃったんだ。 皆んな必ず間違えるし、 弱いから嘘を吐いちゃうんだって。 他人を許せば、自分も許されるんだって。
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