[芹香編] 第5章 芹香side

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「はふぅ」 ひと通り終って、 放心状態で横たわっていると、 昂さんは無言のまま 私の体をティッシュで拭き、 急にその動きを止める。 「やばい。 芹香ちゃんのおっぱい、超絶かわいい」 こんな昼間からするのは初めてで。 カーテンを閉めていても明るくて。 慌てて両手で隠そうとすると、 いつの間にやら昂さんが私の胸に、 顔を埋めていた。 「重い、苦しい、昂さん」 「んー、ごめん」 謝りながらも、 その行為を止める気配は無い。 『そっか、甘えているんだな』と思った。 早くに両親を失い、 長い間その代わりをしてくれた 叔母さんが結婚する。 私には想像もつかないが、 ものすごく寂しいはずだ。 残念なことに自分以外の人間の気持ちは、 知ることが出来ない。 なぜなら、 どんなに本心を伝えようとしても、 言葉にすると微妙に変わってしまうから。 飾ったり、薄めたり、広げたり。 人は決して、 本心をそのまま伝えない。 誰かひとりと長い時間を一緒に過ごし、 その癖を掴み、本心により近づくこと。 そんな修業のような行為が、 『恋愛』なのではないだろうか。
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