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…とかなんとか考えながら、
ひたすら昂さんの頭を撫でていた。
「あー、ずっとこうしてたいなあ。
でも、そろそろ行かなくちゃ」
くぐもった声で、昂さんが言う。
相変わらず顔は私の胸に埋めたままで、
その振動が皮膚を通り、直に心へと響く。
ああ、そうか。
叔母さんと過ごす最後の日が怖いんだね。
感謝の言葉を伝えたり、
思い出も一緒に語り合いたいけど、
それ以上に『別れ』が怖いんだ。
「俺、叔母さんを心配させてるみたいで。
結婚を考えてる彼女がいるって言ったら、
『相手を見せろ』ってさ」
「…ん」
「だから、芹香のこと、
そのつもりで紹介してもいい?」
「うん、いいよ」
昂さんがゆっくりと顔を上げ、
幸せそうに口元を緩めて笑う。
私もつられて微笑みながら言った。
「ねえ、思ったんだけど。
『別れ』と『出会い』ってセットだよね。
叔母さんは結婚相手と出会い、
昂さんから離れていく。
でも昂さんは私と再会したでしょ?
…きっとそういう風に出来ているの。
だからね、
別れることは怖く無いんだよ」
昂さんは更に口元を緩め、
照れ臭そうにまた笑った。
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