360人が本棚に入れています
本棚に追加
小熊サイズのその人は私たちを見て、
ニコリと笑いこう言った。
「お帰り~!」
『ただいま』と昂さんが答え、
『初めまして』と私が自己紹介する。
そこには卓袱台が1つ有るだけで、
その他の家具は一切ない。
「ごめんなさい、芹香ちゃん。
もう引っ越しを済ませちゃって、
元々この家にあった卓袱台以外は無いの。
座布団も無いけど許してね」
「いえいえ、どうぞお構いなく。
あ、ご結婚、おめでとうございます」
叔母さんと婚約者は2人で声を合わせ、
『ありがとう』と返事する。
昂さんがどこからか
ペットボトルのお茶を持ってきて、
私と婚約者に渡し。
それをゆっくりと飲みながら、
婚約者が私に言った。
「あ、俺の自己紹介がまだだったな。
可愛くないけど、カワイイチロウです。
漢字で書くと、こうね」
差し出された名刺には、
『河合一郎』と記載されている。
訊けば実家で犬を飼っていて、
その名前がチロだったのだと。
「チロが死んで、
入れ替わりで俺が生まれたらしいんだ。
だから『可愛いチロ』でカワイイチロウ。
いやいや、実話なんだよ、これ。
ウチの両親って有り得ないと思わない?」
鉄板ネタなのだろうが、
私と昂さんは大笑いし、
それから夜遅くまで皆んなで酒盛りした。
最初のコメントを投稿しよう!