360人が本棚に入れています
本棚に追加
その姿を見ていたら、
抱き締めたくて堪らなくなったけど、
河合さんの手前、我慢した。
「う…、ああっ、ぐう…」
昂さんの嗚咽に切なくなる。
ずっとずっと我慢してたんだよね?
いいよ、うんとうんと泣けばいい。
涙を流すのは、
ちっとも恥ずかしくないから。
ふと昂さんから視線を河合さんに移すと、
笑ってしまいそうになるほど号泣してて。
そういう自分も、
これまた豪快に泣いていて。
結局は3人とも泣いていたのだけど、
それにようやく全員が気づき、
最後には泣き笑いとなった。
……
ジャリジャリと歩くたび音がする。
昂さんが送ると言って譲らないので、
2人揃ってタクシーが拾える大通りまで
歩いているのだが。
深夜1時。
住宅街なので、
さすがに話しながら歩くことも出来ず、
仕方なく手を握り無言で進む。
思ったよりも月は明るく、
その明るさで互いの表情が分かるほどで。
ふと、足を止め、
昂さんが私の耳元に唇を近づけ、
小さな小さな声で言った。
「幸せって、こんな感じなんだな。
なあ、芹香、…幸せなんだよ、俺」
最初のコメントを投稿しよう!