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「その日は結婚式なんだ」
…と昂さんは言った。
たかが叔母さんの結婚式で、
なぜか彼がソワソワしているように見え、
不審に思いつつも、パソコンを閉じる。
うん、映画なんかいつでも観れるし。
あまり恋人っぽいことをしていないから、
たまにはデートらしいことをと思い、
初めて勇気を出して、
私から誘ってみたのに。
断られるなんて想定外だったけど、
…まあ、しょうがないよね。
「芹香さん、そんなウジウジしないでよ」
「ええっ、私が?!」
リビングのソファの上で、
体育座りしながら遠い目をしていると、
華子ちゃんからそう指摘された。
この華子ちゃん、
西村さんと両想いになったのに、
このままココで住み続けるのだそうだ。
なんだかよく分からないけど、
クソ真面目な西村さんが、
マンションでの2人暮らしを拒否したと。
「華子が俺の寝込みを襲って来そうでさ。
ただでさえ添乗とかで不規則なのに、
私生活まで乱れたら、体力もたないから。
それにココだと俺が添乗のとき、
華子を1人にしなくて済む」
…という理由らしい。
あのね知ってる?西村さん。
人間ってさ、肝心なことは後半に言うの。
結局は華子ちゃんを
1人にしたくないんでしょ?
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