[芹香編] 第5章 芹香side

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どこへ? …と訊くのは愚問だよね。 叔母さんに会えということ? 昂さんの言葉を待っていると、 いきなり彼の背後から、 見知らぬ中年夫婦が顔を出した。 「ごめんくださーい」 奥さんの方は、とても元気だ。 いや、たぶん隣りに立っている、 旦那さんも絶対に元気だ。 なぜなら白シャツにウールジャケット、 綺麗なシルエットの細身パンツという、 清潔感溢れる大人コーデなのに、 足元が雪駄なのだ。 もちろん靴下も穿いていない。 しかしニコニコしている。 この季節に裸足は寒いだろうに、 ものすごくニコニコしている。 「失礼ですが、どなたでしょうか?」 「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。 西村でございます」 それは日曜18:30から放送中の、 アニメの主役みたく陽気な言い方で。 世間一般の中年夫婦とは、 明らかに違うように感じる。 あのクソ真面目な西村さんの両親…。 そうは見えないな、残念ながら。 硬直する私と昂さん。 その呪縛を解くかのように、 明らかにこの2人の家族だと分かる、 陽気な華子ちゃんがやって来た。
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