[芹香編] 第5章 芹香side

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「きいいッ。するかもしれないじゃない」 段々、話の論点がズレてきた…。 「私、こう見えても結構モテるからね? この前なんか隣りのクラスの大西君に、 可愛いって言われたんだからッ」 「はいはい。カワイイカワイイ」 「ひどいわ!巽おじさんもそうだけど、 あの見習いの若い男の人なんかさ、 私に言い寄ってきたことあるんだよ」 「はあん?!北岡がかッ? なんで早く父さんに教えないんだ」 …あの、失礼ですが西村父さん。 何をしにこちらへ来たんでしたっけ? 「今度一緒に食事しようとか誘ってきて、 私、絶対に狙われてるからねッ」 「くっそ北岡め!クビにしちゃる!!」 …あの、失礼ですが西村母さん。 この騒ぎを止めないのでしょうか? するとそのとき。 ギャンギャン言っている2人の間に、 それはもう自然な感じで西村さんが入り。 華子ちゃんの襟首をつかんで、 ヒョイと自分の隣りに移動させる。 それを見て、昂さんが呟くのだ。 「贅沢だよ、西村さん。 家族がいるのに一緒にいたくないなんて。 いいなあ、楽しそうな家族で」 そして堰を切ったみたいにして、 ポツリポツリと語り出す。 …自分の生立ちを。 早くに両親を亡くし、叔母さんに育てられ、 そのたった1人の叔母さんが今、 結婚してしまうということを。
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