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しばらくシーンとしていた。
それから西村さんが微かに背中を丸め、
こう言う。
「…なあ、昂くん。
家族は作れるんだよ」
予想外の言葉だったのだろう。
昂さんは戸惑った表情をしたかと思うと、
困ったように笑った。
ゆっくりと静かに、西村さんは続ける。
「どう育ってきたかなんて問題じゃない。
これからどう生きるかが問題なんだよ。
好きな女性と結婚して、
可愛い子供が生まれて。
昂くんはそうして家族を作れるんだ。
2つと同じ家族なんか存在しない。
それぞれがそれぞれのルールで、
家族を作っていくんだから。
心配しなくても大丈夫。
意外と未来は明るいんだぞ。
苦労したぶん、幸せが返って来る。
もう遠慮せず幸せになっちまえよ」
…ひっく、うっぐ。
このとき、
どこからか嗚咽が聞こえて来て。
気付けば西村母が大号泣していた。
「か、母さん??なんで泣いてんのさ」
「…だ…もん」
「なに、聞こえないんだけど」
「うぐ、ひっ、だ…って、
和哉ったらお父さんにソックリで。
血は争えないって思ったの~」
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