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そう言われた西村さんは妙に嬉しそうで。
泣いた照れ隠しなのか、
急に西村母は意味不明な世間話を始め。
それから延々と1時間もフルで喋り倒し、
名残惜しそうに帰って行った。
「…ふう。賑やかなご両親だったねえ」
「んー。あ、芹香ちゃん、あのさ俺…」
昂さんが何かを話し掛けたそのとき、
見送りに出ていた西村兄妹が戻って来る。
そして、西村さんが語り出すのだ
…実の父親のことを。
「昂くんには知って貰いたいんだ。
ウチの家族はダメ家族だった。
失敗例なんだよ。
でも不思議といま、俺は幸せな気分で。
そう考えると失敗でも無いのかなって。
何が幸せで、何が不幸かは、
自分で決めることだから。
ねえ、昂くん。
ここで俺たちが暮らし始めたのは、
本当に偶然だったのかな?
両親がいなくて『家族』に憧れたキミと、
両親がいたけど『家族』に失望してた俺。
それぞれに好きな相手もいて、
それぞれに尻込みしてる。
その尻込みしていた理由もまた、
『家族』だったなんてさ。
…今なら素直に言えるんだ。
俺は華子が好きだよ。
俺は華子を幸せにしたい」
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