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「でもね、小学校に上がってしばらくして、耳を塞げば心の声が聞こえなくなるって気付いたんだ。そこから毎日、授業中は何とか我慢して、休み時間は誰も居ない所に行ったり、耳を塞いでじっとしたりしてたんだけど……。その頃からかな、人と話すのが苦手になったのは」
人見知り、というのもきっとそのせいだ。
園山は地元の公立中学校に進学したため、小学生の頃のメンバーはほぼ変わらず、いじめは続いたという。
「なぁ……いじめって、辛かった…よな」
「まあね。最初はどうして俺が、って思った。でも慣れてくるとさ、毎朝机に書かれた落書きを消すのが当たり前になっちゃって。身体にあざができても、痛みに慣れればどうってことなくなる」
それを聴いて祥は、あの日のことを思い出していた。
園山に手を上げてしまった時、全く動揺した姿を見せなかったのは、恐らくそういった行為に慣れていたせいだろう。それを思うと、胸が痛くなってくる。
「……これからは、嫌なことあったら俺に言うんだぞ」
「ふふっ、心強いね」
うなじの辺りに柔らかい息がかかり、そのくすぐったさに甘く吐息を漏らした。
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