第六章

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 必要以上に褒められて、だんだん居たたまれないような気恥ずかしさに襲われる。 「あ、あんまり言うな! 照れる……」 「そうやってすぐ紅くなっちゃう所も、可愛くて好きだよ」 「っ!」  こめかみにキスを落とされ、祥は顔といわず耳まで真っ赤に染めた。  どう対応すれば良いか分からず、逃げるように視線を空へと向ける。  太陽が眩しかった。 「この屋上も、本当は誰にも教えたくなかったんだ。ここは静かだから、他の人の目や音を気にしないでいられるから。でも、そんな場所を誰かと共有したいって思ったのも、井瀬塚が初めてだったんだ」  あの後、祥の家に誘われたときも本当に嬉しかったと言う。父子家庭の園山にとって、母の手料理というものが新鮮で、幸せだったと。  だが、そこで事件が起きた。  祥がヘッドホンを外してしまったのは大した事ではなかったらしい。問題は、優梨が入ってきたことにあった。 「筑戸がさ、井瀬塚が俺と仲良くしてるのは、俺のヘッドホン外させるためで、俺に好意なんか持ってないって言ったんだ」
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