第一章

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「お前さ、いつもそのヘッドホン外さないよな」 「……」 「何で外さないの?」 「外したくないから」 「何で外したくないの?」 「……別に、そっちには関係ない事だし」  その一言で、遂に祥の堪忍袋の緒が切れた。園山の胸倉を掴んで無理矢理立ち上がらせると、鋭い視線を送りつける。こちらの方の背が低いため不恰好になってしまったが、そんなことに気を取られてなどいられない。 「お前さ、そんなこと言ってるけど、周りの人がどう思ってるか分かるか」 「周りの人?」 「そう! 授業中もヘッドホン外さないような奴がいたら、教室の風紀が乱れるかもしれない。それに先生だって、一生懸命授業してんのにお前みたいにやる気ない奴がいたら、失礼だろ!」    一度に言い切ったため息が上がってしまった。しかし園山は肩で息をする祥を冷めた視線で見下ろすと、気怠げにその口を開く。 「風紀を乱すとか、そっちが言えることなの?」 「……ッ」  思わず言葉に詰まってしまう。そこに関しては反論できなかったからだ。  実際、自分は今園山の胸倉を掴み上げ、怒鳴りつけている。さらに祥の髪の毛は金に近い色で、長めの前髪の横をヘアピンで留めていた。一見軽薄そうに見えるが、これには一応理由がある。    まさかの反撃にペースを乱されたが、この状況で言い訳をするのは格好が付かない。 「俺はお前のことについて言ってるんだ! 毎日毎日そのヘッドホン外せって言ってんのに、何で外さないんだよ!」
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