第六章

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 顔が近づくと体温が上がってしまうのも、こんなに園山のことを考えてしまうのも、友達をやめたいと言われてあんなに悲しかったのも。 「全部お前のせいだ」 「で、でも俺、井瀬塚にあんな酷い事したし……」 「確かにあれはびびったけど、なんつーか、本気で嫌じゃなかったっていうか……」  まさか自分でもあんなに感じるとは思ってもみなかったが、意識していなかったとはいえ好きな相手と一つになれたのだ。痛みは覚えても、嫌だとは思わなかった。 「で、園山は俺のことどう思ってるんだっけ?」  祥が伝えるべきことは全て伝えた。あともう一度、園山の口から聞きたかった。 「――好き。いや、大好きだよ」  その言葉を求めたのは自分だが、改めて目をじっと見つめて言われると、恥ずかしくて全身がむずむずとしてくる。 「それで、俺、また井瀬塚と友達に――」 「いやだ」 「え……?」 「もう友達は終わり。その代わり……今日から、恋人ってのは、どうだ?」  自分なりに精一杯の想いを告げた途端、力強く抱きすくめられた。 「うん。うれしい……すごく嬉しい、井瀬塚っ」 「く、苦しいって」 「ごめん」  謝ってはいるものの、その腕の力が緩まることはなくて。  園山の腕の中で、祥は自分の気持ちがちゃんと伝わって良かったと、安堵の溜息を漏らす。
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