第六章

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 園山が自らの能力に気付いたのは小学一年生の頃。保育施設に通っていなかったのでそれ以前に自覚することは無かったそうだ。  家の外の世界を知らなかったせいで、人には聴こえない声を聴き取れるのが普通だった園山は、小学校に入ってから周りと上手く馴染めなかったという。 「そこからなんだ、いじめが始まったのは」 「いじめ……?」 「うん。たぶん父さんはずっと前から俺が普通じゃないって気付いてて、それで幼稚園とかに行かせなかったと思うけど」  祥は少なからず衝撃を受けていた。まさか、そんな目にあっていたとは予想もしてなかったから。  さらに園山の場合、いじめている本人の心の声が聞こえてしまう。二重で辛かったに違いない。 「俺、よく『気持ち悪い』って言われたんだけど、何でか分かる?」  祥は首を横に振る。第一、そんな風に思ったことがないから、想像も付かない。 「分かりすぎたんだよ、人が口にしないような感情を。本来皆が隠し持っている気持ちを、つい言っちゃったんだ。それがきっかけになったんだと思う」  そう言った後に、だから一番の原因は自分にあるのかも、と付け加える園山を全力で否定した。  すると背後から、ふっと笑う気配を感じた。
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