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「松永、今日この後、時間ある?」
「・・・・・・。」
忘れ物を取りに来ただけの俺は、ひとり残っていたクラスメイトに話しかけられた。
明日からは冬休みで、俺は休み中は学校に来ることもない。
だからこそ忘れ物をしたと気づいた俺は、教室まで取りに戻ったのだ。
そこにいたのはクラスでもあまり誰かと一緒にいることがない、一匹狼のイメージがある箕澤だった。
そんな箕澤に声をかけられ動けなくなってしまった俺は黙り込んでしまい、しばらく2人しかいない教室に沈黙が流れる。
「ごめん、一緒に来て。」
「え・・・?」
忘れ物は鞄にしまったからもう帰っても問題はないけれど、俺は箕澤に手を引かれて抵抗も出来ず、気づけば住宅街にある家の中にいた。
家の中には誰もいなく、まだ家の人は帰ってきてないのだろうかと思う。
「俺ん家。母親は病院で父親は出張だから誰もいない。」
「・・・・・・。」
そんなことを言われても、今自分に置かれている状況を把握することで精一杯の俺には、何も言えない。
家の中を箕澤に手を引かれて歩き、俺は箕澤の部屋へと連れて行かれ、入って思ったことは何もない部屋だということだった。
なぜか寂しいと思ってしまう箕澤の部屋は、ベッドと机が置かれているだけで、他の家具は見当たらない。
「飲み物とってくるから、適当に座って待ってて。」
「うん・・・?」
ひとり部屋に取り残され、仕方なくベッドに寄りかかるようにしてカーペットの上に座った。
改めて見ても本当に何もない部屋に思えて、やっぱり寂しいと思ってしまう。
箕澤はこんな部屋に居て寂しくないのだろうか。
寂しいから偶然教室にひとり現れた俺を連れてきた?
いつもクラスでひとりでいることの多い箕澤のことは俺にはよくわからない。
話しかければ話すけれど、箕澤は自分からは誰かに話しかけることはあまりないように思えた。
俺はなぜ箕澤に家にまで連れてこられたんだろうか。
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