終わりと平穏と高校受験

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制服を着ていない自分の姿と、昨夜の出来事の後帰ることも出来なく、連絡すら出来なかったことに何を言われるかと不安だった俺は、斡弘が作り上げた話を信じた母さんから何も言われなかったことにホッとする。 服はサイズの合う璃紫さんに借りて、制服は念のためと斡弘が上手く言い訳を作り、日曜日にお兄さんに借りて家まで持って来てくれた。 「これ、兄貴が使ってたもの。貸してって言ったらもう使わないし、あげていいって言われたよ。だからもらって。」 部屋に上がってもらった斡弘から袋を受け取り、俺は袋の中に丁寧に畳まれた斡弘のお兄さんが使っていた制服を見た。 斡弘が遊貴の部屋に来たのはこれが2度目で、学校からは斡弘の家のほうが近いせいかあまり遊貴の家に来る機会がないのだ。 「ありがとう。」 「全部片付くまで、俺水曜日も部活行くのやめるから。またあんなことあるかもって思うと安心出来ないし、絶対次で終わりにしような?」 斡弘の柔らかな笑顔と優しい声に泣きそうになるのを必死に堪えながら頷いた。 ふと璃紫さんの言葉が頭を過ぎる。 「斡弘は、大丈夫なの?」 俺の問いかけに首を傾げながら、用意されたコーヒーの入ったカップをテーブルに置いた。 「あー、うん。伍樹だろ?別にただの幼馴染だし、最近はあまりつるむこともなかったから、裏の顔があったんだな、くらいにしか思ってない。確かにまだ信じられない部分はあるけど、でも俺は遊貴の言葉を信じたい。」 そういうことじゃないんだけどな、なんて思いながら、斡弘が気にしてないのなら俺から言う必要はないのだろう。 それに、俺を信じたいと言ってくれた斡弘に嬉しくなった。 伍樹が次に実行する日は明日なのか、それとも水曜日なのか、今はまだわからないけれど、覚悟をしなければならないと思う。 箕澤は今、何をしているのかな・・・。 暗くなる前に帰っていく斡弘を見送りながら、俺は転校前の楽しかった日常を思い出した。
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