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1泊の息抜きをした俺たちはその後再び勉強する日々を送り、平凡ともいえる日常を過ごしていった。
そして、高校入試当日を迎えて程々にと思う俺に対し、斡弘は全身から緊張していますというオーラが見えるようで、実力が出せるのかが心配になる。
斡弘も相応の努力をしてきたし、俺としても高校に入ってからも仲の良い友達が一緒というのは、友達をすぐに作れない俺にとっては心強いことで斡弘には受かってほしいと願うばかりだ。
筆記と面接という試験をなんとかこなし、1日を終えた斡弘はぐったりしていた。
俺にとって不安な部分は面接だったけれど、筆記のほうでどうにかなってほしい。
「とりあえずはお疲れ様。あとは結果次第だけど、斡弘は他にもどこか受けるんだっけ?」
「まぁ、受けることになってる。お前が確実に受かるとは思えないって親に言われてるからな・・・。」
大きなため息をつく斡弘は、受かったと安心して早く盛大に打ち上げというものをしたいと呟く。
受験に打ち上げというのは必要なのかと疑問に思いながら、久しぶりに帰り際に斡弘の家に寄った。
伍樹のことがあってからしばらく来ることを避けていたせいか、おばさんには久しぶりねと言われてケーキを用意される。
俺が来てすぐに買いに行ったらしく額に汗を光らせながら、ゆっくりしていってねと一言残して斡弘の部屋に置いて行った。
「お、ラッキー。ここのケーキ美味いんだよ。遊貴は母さんに気に入られてるからな。久しぶりでも連れてきて正解だった。」
「ケーキは嬉しいけど、俺に寄っていけって言ったのはケーキが食べたかったから?」
ニッと笑ってケーキを口に運ぶ斡弘の答えを無言の肯定と取った。
嫌なことがあるわけじゃないし、伍樹とのことはもう殆ど吹っ切れているともいえるし、まぁいいかと諦めて俺もケーキを食べ始める。
フルーツがたっぷりと乗ったタルトのケーキは甘さが抑えられていて、斡弘が美味しいと言った意味が食べてみて漸くわかった。
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