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サンタクロースの煙突
念願のマイホームを手に入れた。
建売だがなかなか洒落た外観をしていて、レンガ調の外装と飾りの煙突は家族全員の気に入りだ。
ただ、三歳になったばかりの息子は、煙突が本物でないことがどうにも不思議でならないらしい。
「おとーさん。エントツ、どうしてダンロないの?」
煙突の下には暖炉があるのが普通。そん難しいことをよく知っているなと思っていたら、最近読んだ絵本が理由だった。
確かに、三匹の子ブタでは、煙突の下には暖炉があるからなぁ。
「ダンロないと、エントツから出られないよ。サンタさん、どーするの?」
「心配しなくても大丈夫。サンタさんは、煙突に入ることができれば、暖炉がなくても家の中まで来られるんだ」
「どーして?」
「それは秘密。泥棒さんに知られちゃいけないから、サンタさんが内緒にしてるんだよ」
「そうなんだ」
小さな心配を解消してやると、息子は感心したような顔を見せてくれた。
…そんな会話なことなどすっかり忘れ、やがて訪れたクリスマスの朝。
「おとーさん! サンタさん、来た!」
起きてきた息子が嬉しそうに声を上げる。
妻と二人で選び、真夜中に、そっと枕元に置いたプレゼント。いつかは気づくけれど、今はサンタからの贈り物だと思っているそれを抱え、にこにこ笑う息子が愛らしくて仕方がない。
けれど私の視線は、すぐに、息子が抱える贈り物へと移った。
息子が手にしているプレゼントは二つ。片方は間違いなく私と妻が用意した物だが、もう一つにはまるで覚えがない。
妻に、別の贈り物を用意していたのかと聞いてみたが、まるで覚えがないという。
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