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だったらあのプレゼントは、いったい誰が息子に贈ってくれたというんだ?
「サンタさんは何をくれたんだい? ちょっとお父さんにも見せてくれるかな」
そう告げると、息子が二つのプレゼントを差し出してくる。それを受け取り、私は贈り物の片方をしげしげと見つめた。
綺麗にラッピングされた、中身の判らないプレゼント。そこに、一枚のメッセージカードらしき物が挟まれている。
息子に見つからぬよう、そっとカードに眼を通す。
そこに妙な一文が書かれていた。
『入れることは入れるけれど、できたら煙突は飾りでなくしてほしい』
その一文に、以前息子と交わした会話を思い出した。
私が適当に語ったサンタの話がみるみる甦る。
サンタ…本当に、いるのか? しかも、突き抜けていない煙突から入ってきたのか?
息子にプレゼントを返し、私は見るともなしに、煙突が実用品なら、そこに暖炉があるだろう位置に視線を向けた。
その瞬間、火の気のない暖炉と、そこから這い出てくる赤い服の老人の姿が意識に広がった。
…ああ、あの老人は本当にいるのか。世界中の子供達に夢とプレゼントを配っているのか。
でも、息子をあんなに幸せにしてくれた人にこう言うのは申し訳ないけれど、防犯上の都合で、煙突を開通させることはできないんだ。
だから、来てくれるのであれば、来年も、私が語った方法で頼みます。
サンタクロースの煙突…完
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