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「都合のいい解釈をするな。俺はただ――」
征司は暗い海の色に染まった視線を
チラリ僕に落とすと。
「耽りたいんだ。何もかも忘れて」
それこそがきっと
駆け引きなしの本音。
「ただ――耽りたい」
溜息交じり
掠れ声で吐き捨てた。
「お兄様……」
この人は完璧主義な分
どこか不器用で。
「そんなことなら、はじめからそう言って下さればいいのに……」
一途な分
危険な回り道ばかりする。
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