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「下して」
車の近くまで来ると
「おい……」
「もう平気」
僕は征司の腕をすり抜け
自ら助手席に乗り込んだ。
シートに身を寄せると微かに
征司の香水の匂いがする。
古巣に帰ると言うのは
こういう気持ちをいうのだろうか――。
僕は目を閉じ
喉元までこみ上げる想いを飲み込んで。
「お兄様……」
胸いっぱいに吸い込んだ。
「何だ?」
運転席に乗り込んだ張本人が
迷惑そうに答える。
しかし滅多に見せない甘い瞳は
僕を受け入れ愛していた。
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