episode205 迷走幻夜②

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「下して」 車の近くまで来ると 「おい……」 「もう平気」 僕は征司の腕をすり抜け 自ら助手席に乗り込んだ。 シートに身を寄せると微かに 征司の香水の匂いがする。 古巣に帰ると言うのは こういう気持ちをいうのだろうか――。 僕は目を閉じ 喉元までこみ上げる想いを飲み込んで。 「お兄様……」 胸いっぱいに吸い込んだ。 「何だ?」 運転席に乗り込んだ張本人が 迷惑そうに答える。 しかし滅多に見せない甘い瞳は 僕を受け入れ愛していた。
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