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「征司お兄様……」
もう一度呼ぶ。
手を伸ばし傾ぐ首筋に流れる髪を掬う。
僕はミルクを欲しがる子猫のように
飢えて弱り切っていた。
「僕を拒絶しないで……」
愛しくて揉みくちゃにした。
「お願いだから……」
五感のすべてが満たされるまで
僕は目の前の男を強烈に求めていた。
征司は僕にさせるがまま無言で身を委ね
まるで息さえしていないようだった。
耽美な唇。
口づければただ温かく
泣き出してしまいそうになる。
「俺が本当におまえを売ったと?」
と――キスの合間。
「おまえ少しでも信じたのか?」
征司は試すように囁いた。
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