episode205 迷走幻夜②

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「征司お兄様……」 もう一度呼ぶ。 手を伸ばし傾ぐ首筋に流れる髪を掬う。 僕はミルクを欲しがる子猫のように 飢えて弱り切っていた。 「僕を拒絶しないで……」 愛しくて揉みくちゃにした。 「お願いだから……」 五感のすべてが満たされるまで 僕は目の前の男を強烈に求めていた。 征司は僕にさせるがまま無言で身を委ね まるで息さえしていないようだった。 耽美な唇。 口づければただ温かく 泣き出してしまいそうになる。 「俺が本当におまえを売ったと?」  と――キスの合間。 「おまえ少しでも信じたのか?」 征司は試すように囁いた。
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