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この頃ついてない。
私はコツコツと床を鳴らして
店の奥にある休憩スペースへと足を運んだ。
花柄さんが作りおいてくれた
ポットの紅茶を注ぎながら
心の中で不幸な出来事を一つずつ思い出した。
ラムボールを作ろうとして材料を買ったのに
ラム酒がどこも売り切れで
先に買っておいた材料が無駄になったり
いつも遅れてくるバスがその日に限って早めに来て
目の前で行かれたり。
いいことの一つや二つがあれば
些細な不幸なんて気にならないはずなのに―――
「こんにちは。」
それはハッキリと聞こえた。
色で例えるなら水色、匂いで例えるならミント
音で例えるなら…なんだろう。
透き通ってるけど決してか細くない。
花柄さんではない。桐島さんでもない。
綺麗な女性の声だった。
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