序章

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キスから解放された私はキッチンに立つ。 パンと目玉焼きとベーコンを焼き、サラダとコーヒーをつけてリビングへ。 「はい、朝御飯だよ。」 「ありがと!いただきまーす!」 こうして一緒に食事をするのもいつぶりだろう? 滅多に帰ってこない母を見上げると、やっぱり父と私だけが知る顔で笑った。 「なぁに?どうしたの?」 「別に。…パパには会ってるの?」 「この前会ったわよ。一週間くらい前?もう、燃えちゃった。」 「やだ、やめてよ。今さら兄弟なんか欲しくないよ。」 「フフ。…あっ!ねぇ、これ見てくれた?すごくいいでしょ?ママ、台本貰ったとき、鳥肌たっちゃった!」 「まだ見てない。ちょうど試験があったから勉強してたよ。録画してるから今日見る。」 「ああーん!可愛い子!」 ーーーそう。 私の母は、有名人だ。 職業、女優。 15年連続主演ドラマを受けるその実力は、今ではハリウッドからオファーが来るほど、日本で知らないものはいないと言われる大女優だ。
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