序章

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再度キッチンに立った私は、玉子焼きを作りながらウインナーを炒める。 弁当箱にご飯を詰め、作り置きしてたひじきとほうれん草の白和え、玉子焼きとウインナー、茹でておいたブロッコリーとミニトマト一個を添えて完成。 「あら、美味しそう!ママも欲しい!」 「ロケ弁あるじゃない。」 「手作りがいいのぉー!周音ちゃんの手作り!」 「これは私のお昼ご飯よ。…ほら、これで我慢してよ。」 余った玉子焼きを口に放ると、途端に機嫌が良くなった。…チョロすぎる。 一見冷静口調の私だけど、きっと笑って接しているだろう。 やはり親が家にいると、嬉しい自分がいるのだ。 「そうだ。弘子さんから電話あったのよ。腰を痛めて辞めることにしたって。」 「え、そうなの?大丈夫?」 「大丈夫みたいだけど。あの人も結構いい年だからね。ちょっと弱気になっちゃったかな?辞めちゃうなんてさ。」 「新しい人、要らないよママ。私、もう子供じゃないし。弘子さん以外必要ない。」 「フフ。やっぱりね。そういうと思ったわよ。じゃ、頼まないわよ?」 「うん。」 弘子さんは、週二回来てくれてたハウスキーパーだ。 もう15年ほど働いてた。 両親が家にいない私は、弘子さんが友達で、教師で、親で、祖母だった。 放課後、電話してお見舞いに行ってみようと思いつつ、弁当を鞄に詰めた。 「じゃあママ、行ってきます。」 「行ってらっしゃい!気を付けてね!夜にラインするから!」 「分かった!バイバイ。」 笑顔で私を見送る母も、いつぶりだろう?
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