六月

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それから朝比奈倭は、私の手を引き歩き出す。 弄ばれている、と言っても可笑しくない関係だ。 たまに、強引になり 仮面を外して見せてくれる これが自分だけだと思ったか? 優しさを見せたり 本当の笑顔を見せてたり 自分を贔屓目で見てくれてると勘違いしたか? 最初から言っていたことは貫いている。 朝比奈倭は間違った答えを言ってない。 強いて言うなら、変化があったのは自分の方だ。 無言のまま歩き、着いた自宅。 「…周音?どうかしましたか?」 「いえ。何でもないです。」 「そんな顔はしてませんけど?」 「元からこんな顔です。送っていただいてありがとうございました。」 すぐに踵を返せば、後ろからわざとらしい大きな溜め息が聞こえた。 「今のお前は全然可愛くねぇな。」 それだけ言うと足音が遠ざかっていく。 甘い時間も、言われた言葉も、朝からの記憶を全部反芻した。 甘い。でも、苦すぎる。 「……は……苦し……」 誰もいない大きな家。 しばらくボーッとしたあと自分の部屋へ。 窓を開ければ湿った空気。 いつの間にか降りだしていた雨を眺めながら、自分の恋心は厄介なものだと思い始めていた。
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