「私」が生まれた日

「あかりちゃん、バイバーイ」

「バイバーイ！」

　夕暮れ時の帰り道。同じ部活で家が同じ方角の友達と帰宅する少女の名前は森口あかり（もりぐちあかり）。肩まである茶髪に、適度に上げた睫毛を揺らし、唇には僅かに艶めくリップグロスを塗るような、普通の少女。

　性格も明るく温厚。目立つタイプではないが、それなりに友達も多く、先生からの人望もある。特に大きな悩み事もなく、日々楽しく生きている。

　高校二年生という一番楽しい時期だけに今を楽しく生きることを是とし、勉強もそこそこに遊ぶことを優先することもしばしば。

　だからなのか、あかりはいつも笑顔の絶えない少女だ。決して優等生タイプではないものの、怒られた際には上手く聞き流したりしてやり過ごし、一人になった途端に反省より先に、やっと解放されたと笑うほどに。