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彼女の姿は甘美な果実を思わせた。迂闊(うかつ)に手を触れたら熟した桃の様に潰れてしまうんじゃないか。
そう思いながら、博士は儚げで美しい少女を見つめていた。
「これは、私の愛娘、理緒〈りお〉だよ」
健康食品会社や美容機器会社、美容化粧品会社を経営する社長は、主催するパーティーで美しい娘を博士に紹介した。
「初めまして、理緒ちゃん」
博士は微笑んで言う。そして、思う。近くで見ると、よりいっそう美しい。印象的なのは大きな瞳、そして赤い唇。長い睫毛が影を作り、憂いを感じさせる。唇はルージュを塗った様な色艶だ。子供用フォーマルスーツのスカートから伸びた白い足が小学生のクセに艶かしく感じる。
「あなたが先日、学会で発表した不老不死の論文、あれは本当に実現可能なの?」
挨拶もせず、理緒は聞いた。
「あぁ、実験段階だがね、実験の副産物で、沢山の優れた健康食品や、美容品が生まれただろう? 研究の見透しが明るい証拠だ。まぁ、私が本当に作りたい物はマシーンだがね」
年齢は30歳と、若くして研究所の所長を務める博士は答える。
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